皆さんはメジャーリーグベースボール(MLB)に恐ろしい呪いの伝説があることをご存知でしょうか。
「ブラックソックスの呪い」は野球界に衝撃を与えた事件です。
1919年、八百長事件により「ブラックソックス」と揶揄されたシカゴ・ホワイトソックス。
永久追放、球界追放・・・。
スター選手たちの「裏切り」は、チームに長く暗い影を落とすことに。
88年後の歓喜と、伝説の呪いを解き放った日本人選手の存在とは?
今回は「ブラックソックスの呪い」について徹底解説していきます。
ブラックソックスの呪い~栄光への88年~
「ブラックソックスの呪い」は、1919年のワールドシリーズで起きた八百長事件に端を発するシカゴ・ホワイトソックスにまつわる伝説です。
この呪いや悪い評判が、ホワイトソックスに長らく影を落としたとされています。
ブラックソックスの呪いの概要
アメリカンリーグ創設以来、ホワイトソックスは強豪チームとして知られていました。
1901年のリーグ結成初年度に優勝を飾り、初代王者でもあるのです。
1906年にはカブスとのシカゴ対決を制してワールドシリーズ制覇、1917年に2度目のワールドシリーズ制覇を果たしすなど強豪チームとして名を馳せていました。
そんなホワイトソックスは1919年にシンシナティ・レッズとワールドシリーズを戦うことになります。
ホワイトソックスは、通算打率.356の強打者ジョー・ジャクソンや20世紀最高の二塁手エディー・コリンズ、前年に29勝を挙げたエディー・シーコットをはじめ、非常に才能豊かな選手たちを擁しており、その圧倒的な実力から、ワールドシリーズ優勝は確実視されていました。
ちなみにエディー・シーコットは40試合に登板しており、当時140試合行われていたので、3.5試合に1試合は出場していたことになります。

しかも1919年は35歳のシーズンですので、よく体を壊さなかったなと思ってしまいますね。
しかし、ホワイトソックスが圧倒的な戦力を誇っていたにも関わらず、対戦相手のレッズの倍率が下がってきたため、ワールドシリーズが始まる前から妙な噂が流れていました。
そしてシリーズが始まると噂は現実となったのです。
なんと8人もの選手たちが試合に負けるように仕向けていたのです。
その中にはチームの中心人物でもあるジョー・ジャクソンとエディー・シーコットも入っており、特に投手陣に関しては、意図的の試合を壊していたため、不自然な点がたくさんあったと言われています。
もちろん、そんなチームが勝てるはずもなく、事前の期待とは裏腹に3勝5敗でレッズに敗れ、ワールドシリーズ制覇を逃します。
そして、後に「八百長」が明るみになり、当事者たちもこれを認めたため、大きな騒ぎとなりました。
このスキャンダルは野球界に衝撃を与え、アメリカのこれまでのスポーツに対する見方を大きく変える出来事となりました。
チームは「ブラックソックス」と揶揄され、関与した選手たちは永久追放となり、球団の名誉は大きく損なわれることになります。

確かにワールドシリーズで八百長をするって相当ブラックですよね。
ですが、ジョー・ジャクソンはシリーズで打率.375をマークし本塁打も放っています。
そして失策もしていないことから、少年ファンから「嘘だと言ってよ、ジョー!」と言われたという逸話も残っています。
この「嘘だと言ってよ、ジョー!」と言うセリフはかなり有名な言葉になっていて、ドラマの中でも使われるほど。
今でもMLBで不祥事が起こると「嘘だと言ってよ」が見出しとして使われています。
なぜ選手たちは八百長に手を染めてしまったのか
なぜホワイトソックスの選手たちは、ワールドシリーズという素晴らしい舞台で、八百長に加担してしまったのでしょうか。
それは球団内の待遇の格差に原因があったようです。
当時のホワイトソックスは、球団オーナーのコミスキーお気に入りの選手は高待遇を受けていましたが、その他の選手は正当に評価されていないと感じていたようです。

やはりどの世界でも正当な評価というのは、モチベーションに大きく関わってくると感じますね。
そして、八百長に加担した選手たちは皆、評価をされていないことに不満を持っていました。
例えば、お気に入りのコリンズの年俸は、シーコットとジャクソンを合わせた金額と同等ぐらいだったと言われています。
過去の実績をみてみると、確かにコリンズは素晴らしい成績を残していますが、シーコットとジャクソンも勝るとも劣らない成績を挙げているだけに、もう少し評価しても良かったのではと感じます。
ですが、だから言って八百長に加担してよいことにはならないですし、結果的には仕事を失うことになってしまったので、正々堂々勝負することの大切さを物語っているように思えます。
ブラックソックスの呪いの影響は?
この事件以降、ホワイトソックスは長らくワールドシリーズ優勝から遠ざることに・・・。
1921年~1950年までの30年間で勝率5割を達成したのもわずかに9回。
特に1929年からの6年間は勝率4割を切ったシーズンが4度もあり、苦しいシーズンが続きました。
リーグ優勝を果たすには勝率.550くらいは最低でも必要になってくるので、数字からみても厳しいシーズンが続いたことがわかります。
この呪いについての影響は言うまでもなく、8人もの選手が追放されたことで、戦力が大幅にダウンしてしまったのです。

スーパースターであったジョー・ジャクソンを失ったことはファンやチームメイトにとっても大き過ぎるダメージを受けたのでないでしょうか。
それだけではなく、八百長とは無関係だった選手やチームにとっても立ち直るには時間がかかったことが想像されます。
もし、信じていた仲間に突然裏切られたら・・・それも8人も・・・と考えると精神的なショックは言うまでもありません。
その後は1959年、1983年、1993年、2000年にリーグ優勝を果たしますが、いずれもポストシーズンで敗れたため、ワールドシリーズ制覇とはなりませんでした。
少しずつ復活はしてきているものの、なかなかワールドシリーズ制覇までは長い道のりであることがわかります。
呪いからの解放
そして、ようやく呪いが解けたのが2005年のワールドシリーズ。
この年ホワイトソックスは99勝63敗で地区優勝を果たし、ポストシーズンも11勝1敗と圧倒的な強さをみせて88年ぶりのワールドシリーズ制覇を果たしました。
ホワイトソックスには40本塁打を放ったポール・コネルコや、16勝をあげたマーク・バーリーらスター選手を擁し、日本人の井口資仁選手も在籍していました。
井口選手は主に2番打者として135試合に出場し、繋ぎの役割を担いながらも、打率.278、15本塁打、71打点をマーク。
当時のオジー・ギーエモン監督が「MVPは井口だ」と語るほど素晴らしい活躍をしました。
井口選手といえば、状況に合わせた右打ちもできる一方で、長打力もあり、勝負強い選手。
そして、走攻守の三拍子揃った私の好きな選手でもあるだけに、活躍が認められたのはファンとしても非常に嬉しい出来事です。
この勝利は、「ブラックソックスの呪い」が事実上解かれた瞬間として、多くのファンに喜びをもたらしました。
このエピソードを振り返ると、スポーツには勝敗だけでは語り尽くせない、多くのドラマや歴史があることを改めて感じます。
スポーツは、単に技術を競い合うだけでなく、正々堂々と戦うこと、そして、フェアプレーの精神を守ることも重要です。
勝利のために手段を選ばない、あるいは、金銭のために八百長に関与する行為は、スポーツの根底を揺るがし、多くの人々の夢や希望を奪ってしまいます。
スポーツに関わる全ての人々は、この事件を教訓として、常に高い倫理観を持ち、フェアプレーの精神を守り抜くべきです。
この事件は、スポーツにおける不正行為の恐ろしさ、そして、失われた信頼を取り戻すことがいかに困難であるかを物語っています。
一方で、過去の過ちや汚名から立ち直り、再び栄光をつかむことが可能であるという希望も示しているように思います。
ホワイトソックスは88年かかってしまいましたが、見事に復活してワールドシリーズ制覇を果たしました。
この時のチャンピオンリングは、チーム名にも入っている”白”ではなく、黒のセンターストーンを採用しています。
これはブラックソックスの呪いを打ち破ったことを意味しているとも言われています。

アメリカならではのユーモアのあるアイデアですね。
今後もホワイトソックスの活躍を期待しましょう!
そして、この事件を未来に語り継ぐことで、二度と同じ過ちが繰り返されないように願っています。
MLBにまつわるその他の呪い
MLBには「ブラックソックスの呪い」以外にも有名な呪いが存在します。
バンビーノの呪い
野球の神様とも言われているベーブ・ルースの移籍が発端で誕生した呪いと言われています。
ベーブ・ルースを排出したボストン・レッドソックスは86年間もワールドシリーズ制覇から遠ざかってしまったため、ベーブ・ルースの相性だった「バンビーノ」の呪いという伝説が生まれました。
バンビーノの呪いについてはこちらの記事で解説しております。

山羊の呪い
ペットの山羊を連れてワールドシリーズ観戦に訪れた男性が、入場を断られたことに腹を立て、「カブスは二度とワールドシリーズで勝てない」と言い放ったことで、そこから71年間もワールドシリーズ制覇を果たせなかったため、山羊の呪いと言われています。
山羊の呪いについてはこちらの記事で解説しております。

まとめ
八百長が原因で長年ワールドシリーズ優勝が出来なかったとされるブラックソックスの呪い。
こちらに関しては、実際に事件に関わった選手たちが永久追放されているので、大きな影響が出ています。
また、チームとしても悪い印象がついてしまったことで、移籍先としても敬遠されていたことが想像できます。
そういったイメージが回復するのには時間がかかり、ワールドシリーズ優勝にも88年かかってしまったと考えられます。
このブラックソックスの呪いについては原因がはっきりしていますね。
すべてのチーム、ファンが目指すワールドシリーズの優勝。
長きに渡り優勝できなくなると、起因となった出来事について噂が広まっていったと考えられます。
今回は以上となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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